FC2ブログ
 

Working for Peace

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

PageTop

フィリップ・グラスのオペラ『サティアグラハ』

今日10月23日、優れた芸術家たちに贈られる「高松宮殿下記念世界文化賞」をフィリップ・グラスが受賞した。
彼は、映像と音楽だけで綴るカルトなドキュメンタリー映画『コヤニスカッティ』(ホピの言葉で”平均を失った世界”の意)でミニマリズム音楽を世に発表し、一躍有名になった作曲家。
ポール・シュレイダー監督映画『MISHIMA』、
ダライ・ラマ14世のインド脱出までを描いたマーティン・スコセッシ監督映画『クンドゥン』の作曲家といえば、お分かりいただけるかもしれない。

彼はジュリアード音楽院を卒業。インドを旅しながらラビシャンカールに出会う他、
北インドでチベット難民と出会い、仏教徒に。
1972年にダライラマ法王に謁見。
フィリップ・グラススは強力なチベット支援者のひとりであり、ニューヨークの知的文化人なのである。


こうした背景を知らなくとも、私は20代前半で彼の音楽の美しさに魅了された。
ミニマリズムの洗礼を受けたのは、1980年の映画『コヤニスカッティ』。
彼が紡ぎだすミニマルサウンドには、透明なガラスの中でキラキラした光を全身に浴びながら
窒息していくような、独特で清らかな緊張感がある。

先月、彼のオペラ『サティアグラハ』を観た。
インド独立の父、マハトマ・ガンジーの反英独立抵抗運動を描いた物語である。
『サティアグラハ』とは、サンスクリット語で「真理の把握」という意味。
1980年に創作され、演出を変化させながら成長し、数年前にニューヨークのメトロポリタンで再上演された。
そのステージが録画され、映画となり、昨年に引き続き東京の映画館で上映されたのだ。
上映期間はたった3日間。見逃すわけにはいかなかった。

ガンジー2jpg


http://www.youtube.com/watch?v=xd_jKohWevo&list=LLB3X-VtvsRqPkvi7YzMbvcg&feature=mh_lolz


ミニマリズムの巨匠、フィリップ・グラスが創り上げたこのオペラは実験的で、実にアブストラクト。
なにせ、歌詞は、ヒンドゥー教の聖典である叙事詩、サンスクリット語の『バガバッド・ギータ』。
つまり、オペラ歌手が歌う歌詞は、繰り広げられるガンジーの物語とは具体的な関係を一切持たないのだ。

主人公のリチャード・クロフト(素晴らしいテノール歌手!)は、
ガンジーを演じつつも、まったく別次元の詩を歌うことになる。
サンスクリット語だから、観客には歌の意味は分からない。
時折、詩の内容と物語がわずかなテキストで説明されるのみ。
オペラ『サティアグラハ』は、「意味にとらわれず、音として体感される歌詞と、歌詞の影響を受けずに語られる物語」なのである。

もちろん、ガンジーはこの叙事詩を熟読していたはずだ。
ガンジーの精神を創りあげただろうこの聖典の教義が、オペラ全体に流れ、オペラの基盤を創り上げる。
しかし、観客にその意味は伝わらない。
解読不可能な言葉の響き、つまり言霊だけが私たちの肉体に響き渡っていく。

こういう実験的なことをやってしまうのが、フィリップ・グラスなのです!!

私たちはひたすら役者たちの動きを見つめ、美しい歌声と音楽を体感しながら、
自身が持っている情報を組み合わせ、想像力を膨らませながら、
自由に意味を探っていくことになる。
観る者の想像力があってこそ、始めて成り立つオペラともいえる。

歌い手たちは、聖典を歌い上げながらも、その歌詞に影響されることなく、
南アフリカ時代のガンジーの「非暴力・不服従」の物語を象徴的に演じ、進行させていく。

まさしく二重構造で成り立つ、前代未聞のオペラなのです。

アヴァンギャルドな発想と象徴的な演出。
地上にはびこる人種差別。
ガンジーの非暴力と不服従の高貴な姿勢。
そしてミニマルな音と言霊のシャワーを浴び、心の琴線が何度も揺れ、
涙することがたびたびあった。

ガンジー1

http://www.youtube.com/watch?v=laf1ESZCNxk&feature=BFa&list=HL1351055419

ラストシーンは、ニューキャッスルの大行進。
こん棒で打ちのめされても手で防ぐこともせず、自由と権利を手にするために、そして決して服従しないために、
労働者たちは誇り高く歩いたと言われている。

ステージでは具象的な演出はいっさいない。
透明のテープを行進者たちがステージに張り巡らせていくという、重々しくも美しい演出だった。

自由と真実を勝ち取るために、非暴力を貫くことを求め続けたガンジーの姿勢。
フィリップ・グラスのストイックなサウンドから降り注ぐ光の粒子。
そして、美しく昇華された舞台演出と、崇高な歌声。
そうした善きものに包まれて、魂はいつしか至福の境地に。

ラストシーンで、独り聖典を歌い上げるガンジー役のリチャード・クロフトのストイックで美しい姿が、
最澄や空海や親鸞などの日本のお坊さんのように見えてきたのは不思議・・・。

ガンジー3


音楽と歌声に魂が洗われ、久々に栄養をたっぷり吸収したかのような幸福感を覚えた、贅沢な一夜でした。

今もフィリップ・グラスのサウンドが、バロックミュージックのように壮麗に頭の中で鳴り響く。
今、思えば<歌わないオペラ>と言えるほど、全体が音楽で構成されていたことも
現代音楽家フリップ・グラスの作品らしい。

ちなみに、フィリップ・グラスは受賞式の際、前日に明治神宮を訪れたことに触れ、
「日本にくるたび、素晴らしい驚きと、本当に特別なことが起こる。古代の世界を感じながら、
われわれが何であるか、何になれるかを教えてくれる」と語ったそう。

*             *             *             *

追記

なお、以下のような<希望の道>を歩いているのが、人類ですね!

アメリカ人種差別撤廃。
インド独立。
南アフリカ解放。
ミュンマー民主化。

次は、中国民主化!!

ただちにチベット自由化!!

非暴力と不服従の精神を持つチベット人が、自由を勝ち取る日が一刻も早く来ますように。



スポンサーサイト

PageTop
 

コメントコメント


管理者にだけ表示を許可する
 

 
 

トラックバックトラックバック

トラックバック URL
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)


 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。